ふかふか団地ブログ

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「ストレッチ」最終回に寄せて


やわらかスピリッツ - ストレッチ


働くようになってしばらく経ち、整体に行くようになった。

座りっぱなしの仕事でボロボロになった自分の身体のメンテナンスにその仕事で稼いだお金を使うようになってしまったら、いよいよ本末転倒だと嘆きながら、人生で始めての体験に少しワクワクもしていた。

私のイメージとしては、整体師さんに身体中の骨という骨を生理学に基づいてバキバキにしてもらい、正しい心と体を一発で手に入れられるというものだった。

しかし初回キャンペーン4000円の施行を受けている間に、整体師さんに何度も口酸っぱく言われた事は

「今日骨盤を矯正しましたけど、今のままだと1週間も経つとすぐに戻っちゃうと思いますよ」
「せっかく今日受けて頂いたので、出来るだけ短い間隔で次も来て欲しいです」

ということだった。

もちろん営業の意味も多分に含むのだろうし、私自身も感じ取っていたのだけれど、結局言われるままに1週後に再び整体に来る事になった。

そしてそれは習慣となり、現在まで約半年間続いている。

実際継続して通い続けてきたことで、高校時代から抱えていた慢性的な腰痛はほとんど無くなった。



現在も2週間に1度のペースで通い続けているのだけれど、最近言われるようになったのは

「私たちも最終的には半年に1回くらいでよくなるようにしたいんです」
「私たちは戻りにくい身体にする事は出来るけど、それを保つには日々のセルフケアをちゃんと習慣にしなくちゃダメなんです」

ということ。

だから整体師の先生は「ここがこう悪い」ということが分かると、その箇所を治してくれた後に、必ずその場所を悪くしないように保つための「ストレッチ」も合わせて教えてくれる。

そうして整体院に通うごとに、習慣としてのストレッチも1つ1つ増えていった。

おはようとおやすみのベットの上で、会社の椅子に座りながら、行きと帰りの電車の中でも。

それが習慣を越えてクセになり、日常に染み付いていくのを感じる。

身体は初めて整体院に足を踏み入れた時に比べると、大分いい状態になってきたという。

今度からは1ヶ月間隔が開けても大丈夫かもしれないということをこの前伝えられた。

整体師さんに思いっきり身体を矯正してもらうと気持ちがいいし、実感として体が楽になった事が分かる。

だけど目には見えない、自分では感じづらいゆるやかでわずかな変化の中で、時間をかけて「良くしていく」「変わっていく」ストレッチを続けるこそが何より重要なことだという。



私の大好きな「ストレッチ」という漫画が、本日最終回を迎えた。

ここ数話はもうすぐ終わってしまいそうな気配を少し漂わせていたけれど、日常の大きな楽しみとして更新を心待ちにしていた作品が唐突に終わってしまったのは、やはり少し寂しい。

この作品では、蘭と慧子先輩の共通言語として「ストレッチ」がある。

最初の頃は一つ一つ解説しながら行っていたストレッチも、巻を追うごとに自然の行為になって行き、最終的には「会話」そのものになっていった。

母親に会いに行く新幹線の中で、慧子先輩は蘭に教えてもらったストレッチを、当たり前のように自然に行う。

そして「二人だからできたストレッチ」の画像を蘭に送って物語が終わる。

震災の日を境に始まった二人暮らし。日常の中で、目には分からないゆるやかなスピードで、1年半かけてゆっくりと「良くなっていった」作品だったのだろうと思う。

勝手な想像だけれど、前作の事を考えるとアキリ先生にとっても、ゆっくりと時間をかけて「良くなっていくこと」が必要だったのかもしれないし、それがこの漫画なのだったとすると、それが何より一番嬉しいことだ。

私たちには時間が必要だし、その中でゆるやかにでも良くなっていければいいなと思う。