ふかふか団地ブログ

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2018年11月25日(日)第二十七回文学フリマ東京に参加予定。
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けものフレンズ最終回、かばんちゃんの黒い指と仮面ライダーファイズ

本記事の内容そのものは悪い冗談ですが、アニメ「けものフレンズ」最終話のネタバレに沿って進みます。

 

 アニメ「けものフレンズ」が最終回を迎えました。黒いセルリアンに取り込まれたかばんちゃんをこれまで出会ったフレンズが、そしてラッキーさんまでもが力を合わせて救う展開はぐっとくるものがありました。

 さて、無事平和を取り戻したジャパリパークでは、お祝いのパーティが開かれていました。一度はパークに残るといったかばんちゃんに、フレンズはフロートつきのバスをプレゼントし、かばんちゃんは島の外へ出ることを決意します。旅の門出に、かばんちゃんはサーバルちゃんから教わった木登りを披露し、自分は大丈夫であることを皆に伝えます。

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 かばんちゃんの指先が、黒くなっているのが分かります。この場面だけなら、木登りの際の汚れと言い張ることができたかもしれません。

 

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 このカットで、かばんの指は変色し、しかも進行性のものであることがうかがえます。

 この変色に対する説明はなされないままお話は幕を下ろします。もちろん、何かしらの意味を持っていることは疑いようがありません。それでは、これはなにか?

 

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 仮面ライダーファイズに登場する怪人「オルフェノク」はご存知ですか?

 オルフェノクは、一度死んだ人間が覚醒し蘇った人類の進化系です。彼らは個体ごとに他の生物を模しており、その特性を持っています。

 しかしの急激な進化に肉体は耐えられず、その寿命は極めて短く、オルフェノクの死の兆候は、肉体の灰化という形で現れます。

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 かばんは、セルリアンに取り込まれた際に命を落としました。そして、オルフェノクとして蘇ったのです。不完全なオルフェノクとして。

 翻っていえば、フレンズとはオルフェノクの完全な姿であると言えます。皮肉にもそれは、動物が人の形を取ることで生まれることになったのです。ファイズ劇中で永遠の生を受けたオルフェノクが人間の姿を失い人型の怪物そのものになったことからも分かる通り、人間としての特性が強すぎることは、安定した種となることにとって妨げでしかないのです。そして、かばんは「ヒト」のフレンズでした。

 そもそも、仮面ライダーファイズは自分が何者であるか、夢を持たない若者がさまよいながら自らの居場所と在り方を探していく作品でした。けものフレンズもまた、自分を知り、他者を知り、存在を確立し「何をするか」を見つけ出す物語です。

 かばんは、セルリアンに捕食され一度死んで蘇り、自らの寿命がいくばくもないことを悟ったでしょう。だからこそ、島に残って、フレンズと穏やかに余生を過ごすことを、島の外に出るのは「いつか」でいいと嘘をついたのでしょう。ですが、友人たちの後押しで、かばんは旅に出ることを選びました。残された時間をひたむきに生きていくこと。待ち受ける運命がどうであれ、その選択こそが、人間という動物の美しい特性なのだと告げるように。

 

 ……かばんちゃんはヒトのフレンズなので、失った手袋やタイツをしている姿こそが自然状態です。時間を経て、ゆっくりとあるべき姿に再生しているだけ。このエントリを書く前に恐らく正解の解釈には行き当たったのですが、13年越しに仮面ライダーファイズの最終回を想起させる作品に出会ったので、書き残しておこうと思います。