かわいいひと
前回の続きとしては、多分かわいい女の子を書くことだったと思います。
先日「たそがれたかこ」という漫画を読みました。
たかこは、母と暮らすバツイチ45歳。深川から自転車で新大橋を渡り、社員食堂のパートに通う。とくに大きな原因はない。逆にすべてが原因でイヤになっているのだろうか――。このところ、夜にやられて隅田川のほとりで一人、酒を飲む。ところが、だれもいないと思ったそこで、声をかけてきた男がいて――!?
この漫画は45歳のたかこさんが主人公です。
アニメや漫画にありがちな攻略対象になりそうなお母さんみたいな感じではなく、容姿からキッパリ「45歳」として描かれています。
さらに作品前半は登場人物全体の年齢層が極めて高く、平均年齢が50歳くらいのまま進んで行きます。
私は例えばゲームであるキャラクターの下位互換マイナーチェンジであるにも関わらず、容姿がかわいいと「テンションが上がるから」という理由でそちらを選び
自分で買ってきた、オッサンが漂流した島に襲い来る様々な脅威に立ち向かえるよう、成長していく1人用ボードゲームを「オッサンではテンションが上がらないから」という理由で放置する人間です。
たかこさんは耳が遠くて人の話を聴かない母と、近所の子供の世話、自身のパートに嫌気が差し始めてしまい、とても面白いけど心情的にもなかなか読み進めるのがつらい漫画だと思っていました。
ただ、そんな日々を過ごしている内に、ラジオの中で偶然に出会ったロックバンドのボーカル・谷在家光一の歌を聴いて、たかこさんが再び恋をします。
その後に45歳のたかこさんが光一くんと出会うことで、世界が色づいていく様が実に鮮やかで、美しく、泣けてきて、今年読んだ中でも屈指の好きな作品になりました。
一巻のあとがきで、作者の入江喜和先生はこう書いています。
創作において「オリジナリティ」というのは大事だけど、私はこのオリジナリティというのは「クリエイティブ」の意味と言うよりかは「スキマ産業」だと思っています。「人が描かないような人を主人公にしたい」といつも思いながら漫画を描いています。
入江先生の言葉には、そもそもとてつもなく色んな作品を享受していることが前提にあるにも関わらず、その作品数を重ねる毎に「人が描かないような主人公」を見つけるのは難しくなっていくジレンマがあるような気がします。無知が許されなくなるからです。
それを掻い潜って、導き出された「たそがれたかこ」という物語。
恋をしたたかこさんは2巻以降、ぐんぐん世界が広げてゆき、その一つとして髪を明るく染め、今までしてこなかったような派手なファッションをするようにもなります。
その様をみて、私は純粋に「かわいいなぁ」と思ったのです。45歳でも。
私の目標は「かわいい女の子を書くこと」ですが、この素晴らしい漫画を読んで、可愛いとは思った以上に一筋縄ではいかないのだなと思った次第です。
「人が書かないような」を見つけるには、まだまだ未熟者なため、せめて私が書く必然性があると思えるかわいい女の子を模索していければと思っております。